生ノ物【ヒト】

佐々木巧海

万物食

「今日田植えでヘビトンボの幼虫いっぱいゲットしたので明日焼いてもっていきます!」

ポッドキャスト収録前日のメッセージだ。

翌日颯爽と現れた佐々木さんのカバンからは「ヘビトンボの幼虫」だけでなく「オオスズメバチの蛹」「トビケラの幼虫」「岩苔とキブノリ」など続々と取り出されて並んだ。
さらにより美味しく味わうための「クネブ(熊本の柑橘)」や「けらじみかん」「へべす胡椒」も丁重に持参。どれも滋味深くてすんなり美味しく食べれました。調味料もしっくり食べ物に合わせて調整してるのが流石。

ケタケタ余裕で不敵に笑う男1名。
話が面白く止まらない。収録は3時間半にも及んだ。

佐々木さんと食べ物の話していると、時折いつのまにか、
生粋の漁師だった祖父母との体験やエピソードになる。

潮の満ち引きと貝を採るタイミング。
月の満ち欠けや潮の流れと魚との関係。
ある季節にピンポイントで採れる山菜。
一緒に海山の生態を観察し野をかけ自然と生き物の有り様を発見する毎日。
食卓には自然を熟知した祖父母による季節の味が並ぶ。
みんなは食べないけど自分だけが自然の滋味を食べれる優越感。
生き物と自然の多様さへの興味。

原体験はこの幼い頃の祖父母を見て育った暮らしにあったのだろうか。

生物図鑑も好きだった。何度も何度も見返しては摩訶面白い名前と姿に興味を持った。
地図や地名も大好きで行きたい場所ばかりで心が踊った。

生き物への好奇心は特異な構造を持つ「毒」の成り立ちにも及んだ。
今を思えば毒物を知り見分けることは最も大事なこと。
フィールドワークの裾野をひろげてくれること。
毒物対策には今も特別な関心をもって取り組む。

やがて大学で生物情報学の道に進んだ佐々木さんはゲノム解析を通じて生命の謎をより細かく追求しはじめる。
特に後天的な経験や体験が遺伝子に大きな影響を与えることの可能性に興味を持った。

一方で学生時代には「モバイルキッチンカープロジェクト」も唐突に発動。
自作の等身大キッチン屋台で商店街に唐突に立ち、実家からたくさん送られてきたウニやスーパーの魚をさばいて破格で配りみんなでシェアする。自分が美味いと思った味や不思議はみんなとシェアしたい性格のようだ。

衝撃的なランドアートとの出会いは、それまでの自分の既成概念を壊す大きな体験になった。
幼少より気にしていた色盲であることでのアートへの遠慮が隔たりが一気に崩壊した。
これでいいんだ。明確な解析結果が求められる科学の秩序からの脱却。
ありのままの感覚とより自由な発想と伝え方。肩の力が抜けた。

動きは加速した。主観直感が働き出した。ある意味子供の頃に戻ったように。

沖縄での農業生活。アースケイプ団塚さんとの再会。地域おこし協力隊として大分のスペース運営。九州の島々を転々とするフィールドワーク。
なぜか次々と縁が縁を呼び、日本の北端から南端まで多様な自然と土地に分け入り多様な人と出会い多様な生き物を食べ、みんなと共有していった。

なぜか猛烈に旅に行きたくなる
山や森や海を徘徊し生き物の神秘を知りたくなる
疲れて浜辺や河原でごろっと寝たくなる

なんにもない手つかずの自然に身を置き地球のパワーを感じたくなる
ゆっくり登る太陽やぎらりと光る星空とともに踊りたくなる

さまざまな土地の文化と出会い土地の人と美味い酒と肴で交流したくなる
街をひたすら徘徊し土地の時間や歴史を感じたくなる
食べ物や祭りや行事で錯乱し、その土地の雑味に触れたくなる

佐々木さんは、いろんな生き物を捕まえては食べている。
食べることを通じて今そこに起こっている自然の働きをリサーチしている。
その生物が、なぜその地形や気候を好んで生息しているかの成り立ちを確かめている。
生き物と自然の相性や関係性を楽しんでいる。

佐々木さんと話していると、なぜ自分は食べないんだろうとさえ思えてくる。
眼の前に食べないと分からないものがあるのに、なぜ食べて知ろうとしないのか。。

数々のエピソードを飄々と風が吹くように面白おかしく饒舌に語る佐々木さん。
出会った人、出会った食べ物、出会った料理、自然、風景、
それはもはや冒険活劇のように聞いてる人間をワクワクさせる。

是非https://www.facebook.com/saa.takumi/“>facebookの写真1枚1枚とそこに記されたコメントをくまなく読んでいただきたい。
ポッドキャストを聴いて頂きたい。
きっと、私の話しの数百倍佐々木さんの本質が分かると思います。

時計をなおすこと

時間を暦に合わせるのではなく自分が見てる世界に合わせる。
いま自分が立つ環境をありのまま受け入れ身体時計をリセットすること。
自分の感覚や味を信じること。得た知恵を次の行動に活かしていくこと。

行く技術+発見する技術+捕る技術+保存する技術

この4つの生きるスキルが大事だと語る佐々木さんの生き物への興味は貪欲で尽きない。
むしろどんどん裾野が広がり途方もない。ぜんぜん追いつかないのが悩み。

さて、佐々木さんと一緒にいろんな生き物を食べたくなってきた。

by G

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◆関連URL

佐々木巧海
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NUN podcast #21
万物食
ゲスト: 佐々木巧海

【前編 / 88:13】

【後編 / 】



ナビゲート
ギーコa.k.a 及川ギガ英貴社長
イタミヒロシa.k.a 清水博志

2023.6.25 都内某所にて収録

佐々木巧海

1991年、岩手県宮古市生まれ。
食べ物として生き物が好きで、色々な植物や貝、虫などの採集できるものたちを、見つけたり、たまたま見つかったり。各地を歩いて、美味しさよりも面白さを求めて暮らしています。