穴の話

ヒトの条件

無いから有る

2023年11月に横須賀で開催されたNUN主催イベント「HOMe さいごの家」。会場となるIKUSAの階段128段登った先の裏庭に風穴を開いたかのごとく突如として出現した巨大な穴。

縦横1,400mm、深さ1,300mm
入口はソリッドな正方形でありながら内部はごつごつと岩肌が見え隠れする四角錐

実は男3人で掘っちゃったんです。潜在的な穴を掘りたい衝動が結実。
たった4時間ちょっとで掘るのが楽しすぎて到達した穴掘りハイのカタルシス。

中でも”教授”三浦秀彦さんは、うち2日間丹念に時間をかけて色んなアプローチを試しながらインスタレーション作品の領域まで仕上げてしまいました。

穴の周囲に椅子を置いて楽しむ穴カフェ、穴の奥深くでスマホ映像見たり音楽聞いたり、水を注いだり、布で覆って草や音の影絵を楽しんだり、思い思いの遊びと楽しみ方が掘ったその日から次々と発生。女子アナ、穴ーキズム、アナザー、穴バー、穴踊り、…人が集うごとに穴をめぐるダジャレやプランも数々うまれては消えていきました。

さて、イベント会期中何人の来場者がこの穴に入って見つめて過ごしたことか、、、

最後はイベント/展示で残された痕跡たちをすべて穴に返し燃やして浄めました。
そして裏庭は何事もなかったように元の庭に戻りました。

人間が入って余る大きく深い穴を掘ったことは、この期間中に起こった出来事のうち最も印象的な記憶のひとつであることは間違いありません。穴を掘り進めることがHOMEだったのかとさえ思える強い体験。そして穴は、今後も掘って行こうとプロジェクト化の道を歩み始めています。

というわけで思い冷めやらず、
新年早々穴掘った3人で穴談義をしてしまいました。

穴のことを色々書こうと思っても有り過ぎて、ここではうまく書けません。
穴はとうてい書くものにあらず。その醍醐味はとうてい言葉にはならないのです。

穴の中はなんにも無いのにたくさん有る。無いからこそ有る。
大いなる余白だからこそ必然的な力が流れ込む。

掘ってよし眺めてよし入ってよし遊んでよし。
掘ることで土のことやら地層のことやら生態の不思議にも気づかされます。
そこ掘れワンワン、オススメします。

というわけで、どうぞポッドキャストを聴いてください。
特に穴をめぐる三浦さんの事細かな解釈と楽しそうに語る想いを味わってください。

by G

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長い間漠然と無目的に地面に穴を掘りたいと思っていた。
ある時にこの感覚を共有できる人間が3人集まって人の入れるほどの穴掘りが実現した。
このことは非常な喜びであり想像を越えて楽しい体験だった。

スコップが土にめり込む時の音や感触、土が移動することでうまれた穴空間と同じ質量の土の山ができていくこと、
たったそれだけのことが面白かったしそれだけのことを面白がっていることを全自分の細胞が喜んでいた。

穴掘り場を選定し、スコップを握り地面に突き立てるところから始まる全て、
穴を掘り(開き)、穴を眺め、感じ、変化していく穴を観察し穴を遊び倒す。
最後には穴を埋め戻す(納める)まで、全てが楽しく味わいがいのあるものであった。

3人いたことで行為が苦役にならずに済んだのも幸いだった。
そもそも生産性を求めた労働ですらないのだから苦しむ必要などないのだ。

かくして掘られた穴にはいろんな現象が見えてくる。
穴からは何が出てくるかわからないが穴を掘れば確実に何かが出てくる。
これが今回改めてわかった真理だ。さっきまで見えていなかったものが見えてくるのだ。

石や地層や生態系などはその一例。つまり[穴は入り口であり出口でもあるということももう疑う余地がない事実。
掘ることで入り口を作りながら同時に出口を作っているのだ。(あーーーー面白い)
そして何より掘る度に更新されていく景色である。

穴は場所であり状態でもあるので特定された場所に穴を掘るということは時間とエネルギーを使って空間を生成することでもある。
結果、掘り取られた地面のくぼみにはナイことがアルという状態が生まれる。
このことが穴の魅力の一番惹きつけられる要素なのだがこのことについて言葉で説明できる気もしないし、
する必要もないことだとも思う。要はドンシンクフィールということだ。

ポッカリと空いた空間的余白にいろんなものやコトが流れ込んでくる。
[物理現象としても明らかなそれらが人を介して徐々に機能や意味に接続していく。。
それにしても人が入れるほどの穴を掘るのは中々の運動量ではある。

作業には少なからず危険がともなうし穴ができた後も気をつけなくてはならない、落ちたら危ないから。。
競馬だって大穴ばかり狙っていたら危ないのだ。

体を動かしながら考えることはダイレクトでダイナミックで直感に通じている。
そうかこれを求めていたのかという快感があるのだ。
体ごと土(アース)と遊ぶダイナミズム、時空環境と戯れる感覚経験。
こんなシンプルで楽しい遊びありますかいな、、

穴に始まり穴で終わる(穴から生まれ死んで墓穴に入る)のが人の一生。 
ならば生きているうちに己の手で穴をほらずにいられようか。。さあ一緒に無用の穴を掘りましょう(笑)

by H

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新春 穴談義

アナホリスト:三浦秀彦、清水博志、及川ギガ

【Total time : 約100分】

収録 : 2023.1.11   @クラウドデザインアトリエ