来島友幸
毎日、線をひく人
美術家としての来島さんの表現を見ていて一貫して感じるのは
行為を計測し、少しはなれたところから眺めてみる という観察のスタンス。
毎日トレーシングペーパーに罫線を引く
フリーハンドでなるべくまっすぐに引く
罫線を引いた場所と時間と温度と心拍数を紙にタイプする
体の状態と環境の情報をデータに残す
そこから観えて来るものは何なのか。
その先になにか目的があるわけではなく、
起きた現象を数値に置き換え、
標本のようにアーカイブしていくこと自体が作品化している
焦点をしぼらない、不確かさを大事にする
というのがモットーだと云う来島さんならではの表現の形態なんだと思う。
ほんの一瞬の差で変わるもの、
ちょっとしたズレを記録する行為は、
時間というものへの興味からくるようです
機械工学を習い美術の方へ進み映像などをプログラムした作品をつくりはじめた来島さんは
システムを制御したりコントロールするための部品の一部(リレー)が発音することに着目し
微音を使ったインスタレーションという形に変化していく。
そして、
ワークショップ用に更にポータブル作化されたアイテム、リズム測り機が誕生する。
今の所本人以外にこの装置を持つのは我が家のみだ(自慢)。
このリズム測り機というアイテムから開かれていく世界を言語化するのは難しいけれど
丁寧に説明を試みてみよう。
まずスイッチを入れるとリレーが作動しカチカチという音がする (車のウィンカーのような音)
。
つまみが付いていて、それを右に回すとカチカチのスピードが早くなり左に回すと遅くなる。
このシンプルな道具を持って、今のじぶんにとって心地よいと感じる速度を測るのだ。
拍子を頼りに自分の在り処を探る。
空間全体が手の上のリズムに集約されていく
そしてそれが内部(体内時計、ハートビートなど)とシンクロして
みちびかれた先に割り出される今のパルス。
そしてソレ(今の気分に合うリズム)は常に環境と時空間から切り離すことはできない。
当然空間における位置性でも響きが変わってくるし、感じ方も変化する。
この機器のいいところは、鳴らすと聴くが同時に起きる(演奏するときの絶対的基本条件なのだが)こと。
それが手の上サイズで楽器を鳴らすのとは違った簡易さでできることが重要なのだ。
そうして割り出されたその日その場所その時間のその人のリズムを、
来島さんは環境データとして記録する。
このワークショップは自分も未体験なので是非体験してみたい
。
没入する行為と体験のフィードバックこそが来島作品の大きな要素だとおもわれます。
「非造形作家としてのプライドがあって、、」「俯瞰的に観る傾向がある」
と語る言葉からも垣間見えるインスタレーションや罫線など作品の仕上げ方に通ずる徹底したこだわりと本人曰く執着がないという性格のアンビバレンツさはなんだろう
。
本人がどう思っているかは別としてじぶんが受け取るクルシマさんの印象は、
独自の方法で時間を探求する学者であり穏やかなミニマリストなのだ。
by:H
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NUN podcast #10
日々、線をひく人
ゲスト:来島友幸
【前編 55:00 】
【後編 55:00 】
ナビゲーター:イタミヒロシ