生誕100年 松澤宥 図録
没後初めての回顧展、松澤宥に関する資料の決定版
300ページ以上に及ぶ大著。松澤宥に関する資料の決定版。
どのページを開いても、「ψ」「消滅」といった言葉が満ち溢れている。
まさに松澤宥的マンダラ、、、
戦後美術に大きな足跡を残した松澤宥の没後初めての回顧展は、その全貌を知るまさに絶好の機会。他館への巡回展示もないので、この機会を逃してはなるまいと、長野まで足を向けることにした。
会場には、初期の絵画やオブジェ作品から、その後のマンダラのように言葉が書かれた作品、パフォーマンスの記録が並ぶ。
「人類の終わり」をここまで見つめたアーティストがこれまでいただろうか。「ψ」や「消滅」、「絶滅」といった言葉に満ち溢れた展示室は、宗教的なものとは異なる、どこか瞑想的な静けさと終末感を湛えていた。それら言葉たちが、わたしたちの思考に静かにしかし確実に浸食してくる感覚。
その感覚は、自宅アトリエ「プサイの部屋」の再現展示を経験するとき、最も大きなものに達する。
様々な作品やオブジェに囲まれた空間は、瞑想的でありながら、めくるめくマンダラの世界の中に直接放り込まれる。
もはや自我は重要なものではなくなり、「消滅」「絶滅」さえも超えたニルヴァーナ(涅槃)へと近づくことを誘われている。
今回、彼の全貌がこのように回顧されたが、しかしそれによって明らかになったことは、絵画や彫刻といった既存のあり方とは全く異なる表現の荒野を突き進んだ松澤宥の可能性を、わたしたちはまだまだ汲み尽くせていないということだろう。
回顧展は終わりではなく、むしろ始まりである。
by M
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長野県立美術館 展覧会ページ
https://nagano.art.museum/exhibition/matsuzawayutaka