生ノ態【コト】

かいこかいこのかいこ展

最古の家畜"蚕"の多彩な魅力にふれる


わたしはきっと知りたいのだ
かいこのことを
かいこのまわりにあるものや事柄を
かいこの気持ちを知りたい


展示の配布物にかかれてあるヌイトさんの言葉。
この蚕への想いと距離感が嘘いつわりなく伸び伸びと伝わる展示。
それは、たけのまオーナー内藤正雄氏やメンバーとともに現在進行系ではぐくまれている。

2年前、ヌイトさんに初めて会った頃から、
「たけのまの空間と蚕と横浜は相性がいいんですよね」といつも言っていた。
その頃から、ヌイトさんは “カイコさん” と呼ばれ蚕の話をするときはいつも目を輝かせていたし、
その相性のよさが高まり、以来、さまざまな「蚕×たけのま」のコラボを展開してきた。

特に毎週の糸繰りワークショップ体験には、近隣のお子さまや蚕文化に興味をもつ人たちが集い、
糸繰り機を楽しそうにくるくる回しながら不思議な生き物と文化に興味をもっていった。
その流れが、そのままたけのまの空間に現れたのが今回の展示かもしれない。
いつものことでありながらも1年の中の特別な日という感じで。

会場の「たけのま」は、横浜市中区の閑静な住宅街にある築約70年の古民家スペース
古きよき横浜山手の文化を限りなく残しながら現代にリノベーションされた空間
1Fは広い和室の居間や書斎、キッチンがあり、
2Fは、廊下をはさんで両サイドに5部屋がある昭和の典型的なアパート構造。
通年、スタジオ、ギャラリーや地域にひらいたワークショップスペースとして活用されている。

今回は、そんな広く趣きのある たけのま のいたるところが展示に活用されていた。
5つのテーマ+αにしたがって蚕の世界を多角的にとらえられていたのが特徴的。

かいこのまゆのへや
かいこといとのへや
かいこのしごとべや
かいこのあとのへや
資料室
床の間ギャラリー

どこまでコトバで説明できるかわからないが、ひとつずつ端的なイメージを伝えてみます。

【かいこのまゆのへや】
繭の内部を感じる空間。木々の枝や葉、白い布、綿毛などで見立てられている。
内側から観察し静かな時を過ごすことができる。

【かいこといとのへや】
天井から何本も吊られた糸と床からの白い光で発酵する繭。
ゆらゆらゆらぐ糸と強い光の対比が審美的

【かいこのしごとべや】
養蚕道具がある農家の納屋のような見立て暗がり。
耳を澄ますと、蚕が桑をぱりぱり食む音だけが遠くから心地よく聞こえてくる。
時折発せられる光に一瞬蚕が動いたかのような錯覚を覚えた。

【かいこのあとのへや】
繭毛羽と言われる繭の外側にあるホワホワとした短い糸を展示。
まるで、へその尾のようで身近な感じがする。
透明なガラス板を使って絹糸をプレパラートのように挟んで、
糸の繊細は線のあり様をクリアに美しく見せていたのが印象的。

【展示室】
ヌイトさんが長い時間をかけて集めた蚕にまつわる貴重な資料の展示。
蚕の生育プロセス標本や桑の葉、さまざまな種類の繭コレクションもあり。

【床の間ギャラリー】
繭、絹糸、桑、そして蚕の写真や道具を大胆にインスタレーションした空間。
ある意味、これまで展開されてきた「蚕×たけのまコラボ」の象徴的光景。

ちなみに、わたし蚕の音の展示があると知っていたにもかかわらず、
【かいこのしごとべや】で、蚕が一瞬びくっと動いたかのような錯覚で驚きました・・;;

そのぐらい、どのテーマの空間も蚕の世界や背景が引き立つように、
光、風、道具、素材など、あらゆる要素の中から、もっとも伝わる方法をチョイスされ
見事に状況が演出され見立てられています。

今まで経験した蚕にまつわるどんな展示よりも常設ギャラリーよりも
あらゆる視点から、蚕の魅力をひもといている。
身近で多彩で奥深い、ぜんぜんたのしい。ゆたかだ。

すべては、「かいこをもっと知りたい」という、
ヌイトさんの蚕への純粋な気持ちと行動の現れ。
だから蚕の多様な魅力が生き生きとリアルに伝わってくる。
蚕がいないのに、まるでそこにいるかのように感じられる。

8/5までの水木金13:00〜17:00の開催。
ぜひ足を運んで蚕の世界を体験してみてください。

by G

繍/ヌイト
蚕飼い/ものつくりや
2013年蚕に出会い2020年より横浜にて「たけのま×かいこ」プロジェクトを開始
たけのまでの糸繰り体験などを通して蚕の魅力を広める活動をしながら、
布、紙、木、糸を素材とした作品作りや、各所でワークショップや展示を行う

https://www.instagram.com/nu_i_to_/

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▶関連リンク
たけのま  tenjishitsu:Tür aus Holz 竹之丸
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かいこかいこのかいこ展

日時
2022年7月6日(水)-8月5日(金) open: 水木金 13:00-17:00
会場
たけのま tenjishitsu:Tür aus Holz 竹之丸
出展
繍 /ヌイト

昔から人と生活を共にしてきた蚕
その生態や歩みを尊び、懐かしみ、思いを馳せる
蚕に寄り添う展示になればと思います

「かいこは脳みそがすこしあります」
蚕の絵本に書いてあった一文
脳みそがあるとしたら
なにを考えているのだろう
知りたい
桑に囲まれているとき
自分の皮が窮屈なとき
知りたい
足場を組んで
糸にくるまれているとき
知りたい
知りたい
かいこかいこのかいこ
蚕/懐古/回顧

たけのま
tenjishitsu:Tür aus Holz 竹之丸
open:水木金 13:00-17:00
231-0847横浜市中区竹之丸194
Instagram: tt.takenoma
FB: tenjishitsu:Tür aus Holz

※入場無料です。
※感染症対策のため、窓を開けての空気の入れ替えを行います。
また、入場の際は手指の消毒、うがい、手洗いのご協力をお願いいたします。

◉ 山手駅(JR根岸線)より徒歩約10分
◉ 桜木町駅(JR根岸線)または、日本大通り駅(みなとみらい線)より
横浜市営バス21系統(市電保存館行)「柏葉橋」下車徒歩約5分
* やまのうえからは徒歩10分ほどです
* 駐車場はございません
* 住宅街となっておりますので、近隣住民の方へご配慮くださいますようお願いいたします

たけのまは、竹之丸の住宅街にある築約70年の一軒家を元の造りを活かしながらリノベーションして生まれた
スタジオ、ギャラリー、スペースです。1Fはキッチンと居間、2Fは下宿の造りになっており5部屋の空間があります。